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給与からの天引き(弁護士山本悟)

 先日、「男女にまつわるお金の関係」というテーマでセミナーを行いました。交際、婚約破棄、婚姻(内縁)というステップを経ていく中で、損害賠償や財産分与など、法律上お金の問題がどのように変化していくか、それはどうしてそうなるのか、について整理してお話ししました。

 もっとも、お話の途中から沢山の質問を頂戴し、あまり整理してお話できませんでした。男女関係のお金の問題というテーマには、皆様非常に関心があるようで、セミナーはとても盛り上がりましたし、参加者の方から嬉しいお言葉も頂戴しました。

 またこのテーマでお話をしたいと思います。

 

 さて、本日は給与からの天引きというテーマです。最近私は労働審判に出席する機会が多いのですが、日本の労働法下では、上場企業も5人以下の規模の事業者も、法に則った社内のルール整備という観点からは、ほぼ同様の規制を受けます。規模の小さい事業者にとっては完璧にルール整備をするのは難しいように思えますが、裁判所からはほぼ完全なルール整備を求められます。

 本日のテーマは、事業者が規制を知らずに行ってしまう違法行為の典型例になります。

 

 給与明細をよく見ると、実は色々なものが給与から引かれています。税金や保険料、会社から前借したお金の返済金、親睦会費、積立金などがよく見られる典型でしょうか。

 しかし、労働法では、「給与全額払いの原則」(賃金は所定支払日に支払うことが確定している全額を支払わなければならないとする原則。労働基準法第24条第1項本文。)というものが定められています。労働者は、賃金全額が支払われることを前提にして生活設計をしていますから、労働者の生活設計を崩さず、生活の安定のために定められた原則と言われています。

 この原則からは、上記の天引きは許されないように思えます。

 もっとも、税金(所得税、住民税)、社会保険料、雇用保険料など、法律で定められている一部の費用に関しては、会社がいちいち労働者の了解を得なくても、給料から天引きすることができます。

 また、給与の前借があった場合に、前借分を控除することに関しては、前借分を合わせて全額を支払っているのと変わりありませんから、全額払いの原則には反しないと考えらえています。賃金を払い過ぎた場合に翌月分から払い過ぎた分を差し引いて調整する場合(調整的相殺)も、ケース次第では例外として認められることもあります。

 それ以外の親睦会費、積立金などについては、天引きをするためには労使協定(労働者と使用者との間で締結される、書面による協定をいいます。当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者とのあいだで書面によってさだめる必要があります。)が必要です。

 煩瑣に感じるかもしれませんが、これに違反をすると使用者は,刑事罰として,30万円以下の罰金を科される場合があります(労働基準法120条1号)。

 

 いちいちそんなことをするのはめんどくさい、として労使協定をせずに天引きをしている事業者が非常に多いです。しかし、給与全額払いの原則については、裁判所も労働基準監督署も非常に厳しい態度で臨みます。

 労働に関するルール作りは非常に大変で複雑です。一人の専門家だけでは整理しきれないこともあります。事業者と、社会保険労務士、弁護士が協働してルール作りを行うのが望ましく、かつ相当の時間を掛ける必要があります。

(平成29年12月11日)

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