これまで民法570条では、瑕疵担保責任について定めていました。
瑕疵担保責任というのは、売買契約などの目的物に一般の人では容易に発見できない隠れた欠陥(瑕疵)が見つかった場合に、売主が買主に対して負う責任です。
例えば、土地の売買において、土地の地下に汚染物資が埋まっていたことが後で発覚した場合や、中古自動車を購入した後にエンジンが壊れていることが発覚したような場合に生じる責任です。
ある程度きちんとした売買契約書であれば、瑕疵担保責任に関する規定が置かれていることが通常です。例えば「本件土地の引渡後、隠れたる瑕疵が発見された場合には、引渡時から6ヶ月以内に限り、損害賠償責任を負う。」などといった形で瑕疵担保責任に関する規定が置かれています。
この瑕疵担保責任に関する規定の法的性質については、改正前の民法では、議論となっていました。
改正前の通説的な考え方は、売買などの目的物が土地や中古自動車といった物の個性に着目した物(特定物)である場合にはその物を引渡せば足りるが、それでは買主の保護に欠けることから特別に売主の責任を定めた責任(法定責任)である、といった考え方をとっていました。
改正民法では、この瑕疵担保責任についての基本的な考え方を変えたことから、瑕疵担保責任に関する規定を削除しました。
具体的には、改正民法では、売主は、目的物が特定物か不特定物かに関わらず、当該売買契約の内容に適合した目的物を引き渡す契約上の義務を負っているという理解のもとで、欠陥のあるものを引き渡した場合には、売主は契約に適合しない物を引渡したことによる責任(契約不適合責任)を負うとの考え方をとることにしました。
これに伴い、民法上では、欠陥のある特定物の引渡しを受けた場合に、買主が売主に対して請求できる権利の内容が拡大しました。
すなわち、従来の瑕疵担保責任の場合には、欠陥のある特定物の引渡しを受けた場合に、買主が売主に対して請求できる権利は、①損害賠償請求や②契約の解除といったものに限られていました(契約上別の定めがあれば別です)。
これに対し、改正民法は、契約不適合責任として、損害賠償や解除の外にも、他の物の引渡しや修繕を求める追完請求や代金の減額請求も認められるようになりました。
ただ、従来の瑕疵担保責任も、新たな契約不適合責任も、いずれも契約書などで別の定めをすれば、その定めを優先して適用することができる規定(任意規定)です。
そのため、契約書にきちんと明記されている場合では、実務的な影響は低いと考えられますが、契約書にこのような規定が明記されていない場合には、影響が出てしまうことから、契約書についてご自身の希望にかなった内容になっているかを見直すことが必要です。
(平成30年10月4日)
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