ここでは,歳をとったり病気などが原因で判断能力が下がった人をサポートする制度である後見・保佐・補助,まだ判断能力はあるけれども将来に備えておきたい人のための任意後見,財産管理契約についてご説明申し上げます。
身近なお年寄りの判断能力が認知症などで低下し、悪質な業者に騙される等して困っていませんか。押し売りや悪質なリフォーム会社等、いつの時代も高齢者が騙されることは無くならず、今後高齢者社会が進んでいくにしたがって被害は増えていくものと思われます。
成年後見制度は、判断能力が十分でない方が不利益を被らないように、家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人(後見人、保佐人、補助人)を付けてもらう制度です。
成年後見制度は、援助を受ける人の能力が残っている程度に応じて、後見、保佐、補助と段階をつけています。
例えば後見であれば、スーパーでの買い物などの日常生活に必要な行為を除いて援助を受ける人が行った契約などを全て、後見人は取り消すことを出来ます。これが保佐であれば、保佐人が取り消せる行為は法律で定められた重要な行為に限られます。
成年後見の申立てから審判がなされるまで、概ね申立てから2~3か月の期間を要します。申立てに要する費用は多くても数千円で済みますが、場合によっては判断能力の有無について医師の鑑定が必要になり、その場合には5万円から10万円程度必要になります。
成年後見の審判がなされた後、援助を受ける方には成年後見の審判がなされたことを示すために、その旨が登記されます。
以上のように、成年後見制度は使い方によっては援助を受ける人の保護になる制度です。
しかし、一方で、後見人等が就任した場合には報酬金が発生し、援助を受ける人の財産でそれを支払わなければならなくなります。また、援助を受ける人の財産は後見人等が管理するので、援助を受ける人やその親族が自由に出し入れすることはできなくなりますし、後見人等は現金が足りなければ所有する不動産を売却し、売却代金を信託してしまうこともあります。
そのため、成年後見の申し立てをすることで、援助を受ける人やその親族に思わぬ結果が起きることもあります。
弁護士は、成年後見制度の申立てを全て代理することができます。また、後見人等の経験もあるため、成年後見制度の申立てをした場合、どのようなことが起きるかについてもご説明することもできます。お気軽にご相談ください。
将来、自分の判断能力が低下したときのために、信頼できる人に身辺のことや財産のことをお願いしたい、法定成年後見制度では誰が就任するかわからないから不安だ、とお悩みではありませんか。そのような方のために、任意後見制度があります。
任意後見制度は、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときに後見人に就任する人(任意後見人)と任意後見人がすべきこと(後見事務)を、自ら事前の契約(公正証書による契約)によって定めておく制度です。
本人は、判断能力が低下する前は何でも自由に行うことができます。本人が「最近認知症が進んだかもしれない。」というとき、つまり判断能力が低下したときに、近親者や任意後見任等が本人の同意を得て裁判所に申し立てをし、任意後見がスタートします。
もっとも、任意後見人が本人の判断能力が低下したのをいいことに本人の利益を損なう行為をしないように、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見人を監督します。
悪徳業者に騙されて財産を失う危険を防止できるのは成年後見と同じですが、任意後見の最大の長所は、あらかじめ任意後見契約で要望する事項を定めておくことで、判断能力が減退した場合でも、本人が希望する生活を送ることができることにあります。
つまり、本人が任意後見人との任意後見契約の内容(「自己の生活」「療養看護」「財産管理」に関わる事項)を自由に決めることができますし、死後のことに関しても委任契約を行うこともできます。
例えば、任意後見契約の内容として、本人の希望する施設に入れるよう施設入所契約を依頼しておくこともできますし、所有する不動産の管理や処分をどうするかなども事前に決めておくことができます。
このように、任意後見制度は法定成年後見制度に比べ、自由度が高く本人の希望が叶いやすい制度です。
もっとも、任意後見契約は公正証書で作成しなければならず、契約内容も細かく矛盾がないよう取り決める必要があります。
また、任意後見人の仕事(後見事務)には法的な知識や判断を要することもあり得るため、任意後見人には法律家が就任する方が望ましいといえます。
弁護士であれば、任意後見契約書の作成から任意後見人の就任、任意後見事務の遂行まで、全てを扱うことができます。
年齢を考えると、ご自身の不動産や預金の管理に不安ではありませんか。判断能力を失う前から、第三者に財産の管理や事務を依頼したいとお考えではありませんか。このような場合には、財産管理委任契約を締結することができます。
財産管理委任契約とは、本人の財産の管理やその他の生活上の事務について、本人の代わりに代理する人を選び、具体的な管理内容を決めて委任する契約です。財産管理委任契約は、当事者間の合意で効力が生じ、内容は本人と代理をする人で自由に決めることができます。委任契約の一つですから、代理する人は誠実に財産を管理し、事務を行う義務を負い、それを怠った場合には損害賠償義務を負います。
財産管理委任契約は、成年後見制度と異なり、判断能力の低下がなくても利用できます。
したがって、本人がすぐに財産の管理や事務を代理人に始めて欲しい場合、判断能力が徐々に低下するとしても、その前から管理や事務を継続させたい場合、死後の事務処理も依頼したい場合に、用いるべき方法といえます。
財産管理委任契約を結ぶにあたっては、いかに信頼できる人を相手に選ぶかが重要となります。場合によっては、選んだ相手が財産を持ち去ったり、委任に反した処分をしたりする可能性があるからです。
そのため財産管理委任契約の相手方には、弁護士法等で法的に縛られている弁護士をおすすめします。