相続人の行方がわからない
父が亡くなり、母、私、弟、妹の4名が相続人なのですが、妹とは、15年前から連絡も取れなくなっていて、どこに住んでいるかもわかりません。
父の遺産については、妹を除いた母、私、弟で遺産分割協議を行えばいいですか。
お父様の不動産の名義変更、預金の解約相続手続については、妹さんも含めた法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
妹さんの所在調査、所在不明の場合に必要となる手続きについてご説明していきます。
行方のわからない相続人の所在調査
妹さんの所在調査を進めていきましょう。
最初に、妹さんの本籍地がある市区町村役場に戸籍附票の発行を申請しましょう。
戸籍附票には、対象者の転居先がまとめて記載されており、現住所も記載されています。
妹の戸籍附票を取得したところ、「平28.2.4職権消除」と記載されていて、最後の住所地が横棒で抹消されていました。
「職権消除」とは、対象者が住民票所在地に居住していないことを行政が確認した際に、行政の職権で住民票を抹消したということです。
妹さんは、現在住民票をどこにも置いていないようですね。
住民票を移していない場合であっても、郵便物の転送届が出ている場合もあるので、最後の住所地宛に郵便物を送ってみましょう。
妹の最後の住所地に手紙を送ってみたのですが、
「あて所に尋ねあたりません」というスタンプが押されて戻って来ました。
郵便物も届かない状況のようですね。
妹さんに夫や子どもがいる場合には、妹さんのご家族に妹さんの行方を尋ねる手紙を送ってみましょう。
次に、妹さんの最後の住所地の近隣住民に、妹さんの行方を尋ねてみましょう。
妹の子ども達に手紙を送ったのですが、行方はわからないという回答でした。
近隣住民の方にも話を聞いたのですが、転居先などはわからないとのことです。
わかりました。
妹さんの所在について一定の調査は尽くしたので、裁判手続を利用して解決しましょう。
裁判手続を利用するにあたっても、ご本人において然るべき調査を尽くしてから申し立てる必要があるので、これまでの調査も無駄にはなりません。
所在調査の方法について
上記では、一般的な所在調査方法のご説明に留めましたが、調査方法は各事案毎に異なります。
対象者が外国に移住しているようなケースでは、外務省を通じた調査を実施することになりますし、明治時代初期の方が対象者となるケースでは、近隣の寺院を尋ねて檀家リストから相続関係を辿ることもあります。
弊所では、個人の遺産相続手続だけでなく、区画整理事業、公共事業における不在地主調査など、幅広い事案をお手伝いした経験がありますので、お困りの際は是非ご相談下さい。
ご依頼いただいた場合には、各種調査は弁護士が実施することになります。
不在者財産管理人の選任
調査を尽くしても妹さんの所在が明らかにならない場合には、妹さんに代わって遺産分割協議を行う不在者財産管理人を選任してもらうために、家庭裁判所に申立てを行いましょう。
家庭裁判所に不在者財産管理人選任申立てを行う場合、
どの程度の費用がかかるのでしょうか。
収入印紙800円と切手2000円程度が申立ての際に必要になります。
その後、不在者財産管理人の報酬支払原資として、30万円~50万円程度の予納金を家庭裁判所に納めるよう指示されます。
家庭裁判所の予納金が大きな負担になりますね。
家庭裁判所への申立書に、不在者財産管理人の候補者を記載した上で、予納金を不要とする旨の上申書を候補者から提出することにより、家庭裁判所の判断に基づいて、予納金納付が指示されないケースもあります。
不在者財産管理人が選任された後の手続きはどうなりますか。
相続人3名と不在者財産管理人との間で、遺産分割協議を行います。
不在者財産管理人は、妹さんの財産を守る責任がありますので、行方がわからないとしても、妹さんに法定相続分に従った財産を分配する必要があります。
不在者財産管理人の選任
不在者財産管理人との遺産分割協議においては、不在者財産管理人が現実に財産分配を受けず、行方不明となっている対象者が帰ってきた際に、法定相続人から対象者の取得分を支払うという、帰来時弁済型の遺産分割協議も検討できます。
帰来時弁済型の遺産分割協議は、全てのケースで認められるものではなく、相続財産の多寡、行方不明者が帰ってくる可能性の大小、法定相続人の資力などの事情を総合考慮して、家庭裁判所が可否を判断することになります。
まとめ
本稿で不在者財産管理人の選任による解決方法をご説明しましたが、ご事情によっては、失踪宣告の申立てを行うことが望ましいケースもございます。
相続人が行方不明になっているケースでは、行方不明者の調査から裁判所の申立てに至るまで、煩雑な手続きが必要となりますので、弁護士にご相談することをお勧めします。
弊所では、特殊事情のある相続について、他士業の方からもご相談を多数いただいており、解決に向けたノウハウを蓄積しておりますので、是非一度ご連絡ください。
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