会社でパワーハラスメントが起きた場合の対応について

國澤弁護士

2022/03/08

お悩みさん

私は社員10名の会社を経営しています。社内でパワーハラスメントが起きてしまった場合の対応の仕方を教えてください。

國澤弁護士

職場でパワーハラスメント(パワハラ)が起きてしまった場合の会社の対応の仕方をご説明します。会社はハラスメントを防止する義務がありますので、きちんと対応しておきましょう。

パワーハラスメントが起きた際の初動

お悩みさん

従業員の1人が同僚からパワハラをされたと言って最近会社を休みがちです。会社としてはどのように対応すれば良いでしょうか。

國澤弁護士

まずは、被害を受けたと言っている従業員、その同僚、それぞれの主張を聴き取りましょう。迅速に対応することが大切です。当事者以外からも事情を聴いた上、事実関係(何があったのか)を確認してください。パワハラにあたるかどうかを判断するよりも前に、客観的な事実関係を明確にする必要があります。

お悩みさん

わかりました。まずは両方から話を聞いてみます。当事者からの聴き取りの際に、注意しておいたほうが良いことはありますか。

國澤弁護士

ハラスメントの内容を具体的に(いつ、どこで、誰が、どのような行為をしたのか)聴き取るようにしましょう。また、聴き取りの際には、プライバシーに配慮し、聴き取った内容を他の人には話さないようにしてください。

パワハラとは

お悩みさん

パワハラという言葉はよく聞きますが、どういう意味なのでしょうか。

國澤弁護士

法律では、「職場において行われる優越的な関係を背景とした発言・行動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害するもの」 と定義されています(労働施策総合推進法30条の2)。

お悩みさん

法律の言葉だと難しいですね、「優越的な関係」ということは、上司から部下に対する行為ということでしょうか。うちの会社で問題になっているのは同僚同士の話なのですが。

國澤弁護士

典型的には上司から部下に対する行為ですが、何らかの優位性を背景にしたものであればあてはまりますので、同僚同士の行為や、部下から上司に対する行為であってもパワハラになることがあります。

お悩みさん

2人に聴き取りをしたところ、加害者とされている同僚は、その従業員がミスをしたから指導したのだと言っています。指導だとしてもパワハラにあたってしまうのでしょうか。

國澤弁護士

従業員を指導すること自体は問題ではないのですが、それが業務上必要かつ相当な範囲を超えないように注意をすることが必要です。今回加害者とされている方が、どのように指導をしたのか、指導することになった経緯なども詳しく聴き取ってください。

お悩みさん

わかりました。他にも問題行為がないか確認したいのですが、パワハラにあたる行為というのは、具体的にはどのような行為のことを言うのでしょうか。

國澤弁護士

代表的なパワハラ行為としては6類型あります。

具体的には、①身体的な攻撃(殴る、蹴るなど)、②精神的な攻撃(人格を否定するような発言をする等)、③人間関係からの切り離し(同僚が集団で無視する等)、④過大な要求(対応できないようなレベルの仕事を押し付ける等)、⑤過小な要求(嫌がらせのために仕事を与えない)、⑥個の侵害(不必要にプライベートな事情を詮索するなど)です。

お悩みさん

②精神的な攻撃が一番問題になりそうだと思いましたが、他の事情もないか聞いてみます。

パワハラが起きてしまった場合、会社はどのように対応をすればよいか

お悩みさん

実際にパワハラがあった場合には、会社はどのような責任を負いますか。

國澤弁護士

会社が被害者に対して負う責任は、使用者責任(民法715条)と安全配慮義務違反があります。

使用者責任というのは、従業員が業務中に第三者に対して損害を与え不法行為責任を負う場合に、従業員を使用する会社が損害賠償責任を負うというものです。

もう1つは、使用者は労働契約の内容として労働者を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っているため、パワハラが発生した場合、安全配慮義務違反としての責任を負います。

お悩みさん

損害賠償の内容を教えてください。

國澤弁護士

損害は大きく財産的損害とそれ以外(非財産的損害)にわかれます。 財産的損害としては、病院での治療が必要となった場合は、治療費、入院費などがあげられます。また、パワハラで働けなくなった場合には本来得られるはずであった給与は「逸失利益」もこれにに含まれます。非財産的損害としては慰謝料があげられます。

お悩みさん

聴き取りの結果、やはりパワハラだという場合、加害者の従業員に対してはどのような処分をすればよいでしょうか。

國澤弁護士

会社の加害者に対する対応は、パワハラ行為の内容やその程度、被害者が受けた被害の内容や程度などによって異なります。

軽微なものであれば被害者への謝罪や厳重注意などで済む場合もありますが、そうでなければ「懲戒処分」の対象とするかを検討します。軽微な行為をした従業員に対して懲戒解雇などの重い処分をした場合、懲戒処分が無効となることがありますので、処分は慎重に検討しましょう。

お悩みさん

そうなんですね。具体的にどう動けばよいか不安なので、詳しい事情を聴き取ってから、一度相談に行きたいと思います。

少しでも不安なこと、悩まれていることがございましたら
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